豊かな保育の実現を目指して (東野父母会/富岡父母会 2002年 Kさん)

豊かな保育の実現を目指して(東野父母会/富岡父母会 2002年 Kさん)

 

2002年10月13日 

 

昨年7月、小泉内閣は『待機児ゼロ作戦』という、3年間で15万人もの待機児童を受け入れるという政策を打ち出しました。「最小のコストで最大のサービスを」がスローガンらしく、この不景気なご時世に、まさに救世主のような幻想を抱かせます。しかし、そこにはさまざまな問題が隠れており、私たち父母はその問題をしっかり認識していく必要があると思のです。

 

現在浦安市が抱える待機児は200人以上。全国的にみてもかなり深刻な状況は、市長も認めています。すでに公立7園はどこも定員オーバーのすし詰め状態。『待機児ゼロ作戦』のもと、この浦安にも確実に公設民営の保育園が生まれようとしています。

 

「公設民営」。公立の建物であるにも関わらず、その実際の運営は民間企業が行うものです。代表的なものに、東京三鷹のベネッセコーポレーションが運営する保育園があります。ベネッセコーポレーションといえば、早期教育の大手企業。

 

うーん、そこに入れば保育園のうちから、豊富な教材を使い、英語や算数などの教育をしてくれそうな印象さえしますが。しかしその実情はというと、低コストでの運営と利益が求められる企業であるため、人件費は極力抑えられ、園長含むスタッフの全員が契約社員。雇用に対する保障は少ないのです。皆さんはご存知でしょうか。

 

保育園運営上、そのコストのほとんどが人件費であり、公立保育園の場合、保育士の平均年齢が45歳、認可私立で27歳、民間保育園はもっと若い。平均就業年数も公立は25年、民間は7年です。これが「公立保育園は金食い虫」と言われる理由となっているのです。

 

しかし、この差の意味をどう考えるかが問題です。乳幼児期というのは、人間形成の土台が築かれる大事で難しい時期であり、一般的に保育士は、0歳児から5歳児まで、それぞれ段階を追った保育実践を2回経験して、初めて一人前となると言われているそうです。

 

となると、少なくとも12年の保育経験が必要となってきます。就業年数の差は、一般的に民間のほうが雇用の条件や労働条件が厳しいことを意味しています。預けている『保育園の良さ』というのは、何よりそこで行われる『保育の質の良さ』だと思います。

 

質のよい保育を提供してもらうためには、やはり保育を実践する保育士の専門性と、その労働の保証があってこそ実現するものと考えます。そういう意味においても、私たち父母は、保育士と手をつなぎ保育運動を続けていく必要があると思うのです。

 

一概に公立保育園の質が良くて、民間保育園が悪いと考えているわけではありません。ご存知の方も多いと思いますが、日本は児童福祉法において、労働その他の理由により「保育に欠ける」児童は、その自治体が保育所において保育する義務が定められています。

 

児童憲章においても、児童権利宣言においても、いかなる児童も心身ともに健全に生活する権利をもっており、国や地方自治体はそれを保護する義務があることを謳っています。運営主体が公であっても民であっても、その環境を保障する義務が自治体にあるのです。

 

保育園民営化の流れは、今となっては変え難い現状でありますが、「公的保育の責任」は当然の権利として、訴え続けていかなければならないことだと思いますし、民営化の流れが止められないとなれば、その中で、少なくとも最低基準が保たれた保育実践が行われるよう自治体に訴えていく必要があると思います。

 

鳥取大学の村山祐一氏は、『保育情報』臨時増刊号の中で以下のように述べています。—「小泉首相は『米百俵の精神』を強調したが、そもそも『米百俵の精神』とは、子どもへの教育投資を最優先に進めることではないのか。今こそ子どもの権利条約の理念「子どもの最善の利益」をふまえて、幼い子どもが1日の大半を過ごすにふさわしい保育水準の向上、改善を実現すべきである。選択力のない乳幼児に「痛み」を押し付ける「構造改革」であってはならない。—私も、全くの同感です。また、今年も国会請願に向け秋の署名運動が始まりました。ひとりの力は微力かもしれませんが、こうした運動を続けていくことが、明日のよりよい保育につながると信じています。

 

次のエッセイへ進む

 

先輩たちの子育てエッセイ一覧に戻る

 

浦安保育メモに戻る